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正しく知っていただきたい 摂食・嚥下障害 摂食・嚥下障害の検査・治療法

摂食嚥下障害の治療とは

目で見て食べ物を認識してから、口に入れた食べ物が胃に運ばれるまでに、さまざまな段階を踏んでいます。特に問題のない人は、食べ物を飲み込むまでの一連の動作を何気なく行っているのですが、舌や喉の動き、唾液の分泌など、さまざまな機能が関わっています。そのため、どこに問題が生じているのかを明確にし、対処することが必要となります。つまり、「摂食嚥下障害」と一言で言っても、症状も違いますが、人によって治療方法も違います。原因に応じた治療を行うことが必要なのです。

治療に必要な診査・診断

そもそも、患者様が訴えている症状が摂食嚥下障害によるものなのか、診断する必要があります。また、摂食嚥下障害を引き起こしている原因は何なのか、検査を行い明確にします。こちらで紹介する検査は、ご自宅や介護施設でも受けられ、当院訪問歯科でも多くの患者様に受けていただいています。

スクリーニング検査

スクリーニング検査は、摂食嚥下障害かどうか診断するための簡単な検査です。実際に唾液を飲み込んでもらったり、少量の水やおかゆなどを食べてもらったりして、お口の中に食べ物が残っていないか、むせこみはないか、声の変化はないか、といったことを確認します。

  • 反復唾液嚥下テスト
    反復唾液嚥下テスト

    30秒間で何回唾液を飲み込めるかを確認します。摂食嚥下障害が疑われるのは、2回以下の場合です。

  • 改訂水飲みテスト
    改訂水飲みテスト

    少量の水をお口に入れ、飲み込む動作を2回行っていただき様子を見ます。むせこみや声の変化などを確認します。

  • フードテスト
    フードテスト

    実際に少量(茶さじ1杯)のゼリー状の半固形物の食べ物や液状の食べ物(おかゆなど)を食べてもらい、むせこみや呼吸の様子などを確認します。

  • 頸部聴診法
    頸部聴診法

    飲み込む前の呼吸の音と、飲み込んだ後の呼吸の音を聴診器で確認する検査です。フードテストと併せて行います。

嚥下内視鏡検査

鼻から直径3㎜ほどの内視鏡を入れ、その状態で食べ物や飲み物を摂取してもらい、食べ物が噛めているかどうか、食べ物が唾液ときちんと混ざっているか、飲み込みの様子、食べ物がスムーズに食道に流れているかなど、さまざまなことが確認できる検査です。この検査によって、何が原因で摂食嚥下障害が起きているのかを明確にできます。内視鏡を入れるので違和感がありますが、簡単にできて、何度でも繰り返し行える検査です。

摂食嚥下障害の治療法

歯を磨く老夫婦

摂食嚥下障害の原因はさまざまですが、高齢者の場合、加齢によって起こる機能の低下が原因となっている場合が多いです。そのため、お口の機能を高める「口腔ケア」やさまざまな訓練(リハビリ)を行うことで、症状を改善し進行を予防できます。

口腔ケア

口腔ケアとは、お口の機能を高めるため、器質面・機能面から行うケアのことを言います。 お口の中を清潔に維持することで、お口の中の健康維持だけでなく、全身の健康維持にもつながります。また、お口の機能を高めることは、食べる・飲み込む機能を高めるのはもちろん、表情が豊かになったり、発音が明瞭になったりと、さまざまな効果が期待できます。

  • 治療する歯科医師
    口腔清掃(器質面)

    歯石の除去など、専用の機器・器具を使用してご自身では落とせない汚れを取り除くケア、舌や粘膜の清掃などを行います。また、歯磨き指導などを行い、セルフケアの質を高めます。

  • 食事中の女性
    改訂水飲みテスト

    食べたり飲み込んだりするために必要な機能を高めるために行う、歯や舌などの訓練(リハビリ)のことを言います。

嚥下リハビリ
(摂食・嚥下機能訓練)

摂食・嚥下に必要な筋肉を動かし、機能を高めます。必要なリハビリは、患者様によって異なりますが、次のようなものがあります。

  • 嚥下体操

    食事前の準備体操として行われ、習慣づけをすると体操を行うだけで、脳や身体に「これから食事をする」という意識が芽生えます。首や肩、口腔器官など、摂食・嚥下機能に関係のある部位を運動でリラックスさせて、摂食・嚥下をスムーズに行えるようにするのが目的です。口をすぼめて深呼吸したり首を回したりしますが、首や肩に障害のある方は、医師の指導に従った運動を行うようにしてください。

  • 頸部可動域訓練

    首や肩、胸が動ける範囲に制限がかからないように予防・改善するための訓練です。嚥下体操にもある通り、首や肩に障害のある方は、医師の指示を仰いで危険がないように運動を行いましょう。頸部可動域訓練は、かみ砕いた食べ物と唾液を混ぜ合わせた食塊を、舌や頬、唇を使って喉へ送るための機能や筋肉の緊張を和らげます。筋肉のリラクゼーションが目的なので、温熱療法やマッサージを併用することもあります。

  • 開口訓練

    口を開けたり咀嚼したりする際に使う筋肉をトレーニングする訓練です。口を閉じた状態から最大限まで開いて10秒保ち、10秒休憩するというトレーニングを行うことで、摂食・嚥下機能が改善します。顎関節症など、顎の関節に問題がある方は、開口訓練を行わないことがあります。

  • 口唇の閉鎖訓練

    口を閉じる訓練です。食事中の食べこぼしや口からよだれが垂れるなどの、摂食・嚥下障害による症状の改善・予防を目指します。指を使って負荷をかける、「パ」「タ」「カ」「ラ」と発声する、ブローイングと呼ばれるストローを使って息を吹く練習といった、口唇のトレーニングを行います。

  • 口唇・舌・頬の動きの訓練

    飲食物を口の中に入れて咀嚼し、作った食塊を口唇や舌、頬を使って喉へ送る摂食・嚥下機能をトレーニングします。口唇、舌、頬といった部位によってトレーニング内容は変化します。口唇周辺の筋力や感覚の低下を予防・改善しますが、口腔内が乾燥していると痛みが促進されたり口内を傷付けたりするので、清潔さと潤いがあるか確認してから行います。また、舌のトレーニングでは唾液の分泌量が増える為、唾液の誤嚥が起きないように注意します。

  • 唾液腺のアイスマッサージ

    口からよだれが垂れてしまう方や、唾液でのムセが多い方に対して行います。唾液を分泌する唾液腺に近い皮膚を、氷水などで冷やしながらマッサージをすることで、唾液の分泌を抑えます。冷たすぎる場合は、時間を短くしたりタオルなどでくるんだものを使ったりします。長い時間マッサージすると、凍傷になる可能性があるので、5~10分程度に抑えます。

  • 氷舐め訓練

    嚥下反射を鍛えるために行います。嚥下反射とは、気管の入り口をふさいで飲食物をスムーズに食道へと送るための働きです。嚥下反射が鈍くなっていると誤嚥を起こしやすくなり、誤嚥性肺炎になる可能性が高くなります。実際に口に含むので、重度の摂食・嚥下障害を持つ患者様には向きません。

  • 歯肉マッサージ

    口腔内の感覚や唾液の分泌量などを改善させるために行います。食事する直前に、口内を清潔にしてから、指で前歯から奥歯へとリズミカルに擦ります。口内炎などの疾患や感覚過敏がある場合は、行わないでください。

頭部挙上訓練

シャキア・エクササイズとも呼ばれ、飲み込む際に使われる運動機能の改善するために行います。喉へ送る運動機能を促進し、喉に飲食物が残ることを少なくする効果が期待できます。しかし、頚椎症や高血圧症を患っている患者様に行う場合は、注意が必要になります。

観察ミールラウンド

楽しそうに食事する老人

観察ミールラウンドとは、食事の様子を観察することを言います。歯科医師だけでなく、医師や介護支援専門員などのさまざまな分野の専門家が、口から食べる機能を維持するための取り組みについて検討することが必要であり、実際に食べている様子を観察し、それぞれの視点からみた検討が必要となります。訪問歯科では、歯科医や衛生士が咀嚼能力など口腔機能の点から、どのような取り組みが必要なのかを明確にします。